※ 本記事は 2026年5月 時点の情報に基づきます。最新情報は各公式機関の発表をご確認ください。
電子帳簿保存法(でんちょうほう)。経理・総務担当者なら一度は耳にしたこの法律ですが、令和6年(2024年)1月の改正以降、中小企業の対応は事実上「義務化」されました。私(ゆかりん)は行政書士・社労士として、300社以上の中小企業の電帳法対応をサポートしてきた立場から、本記事では電子帳簿保存法の基本と、中小企業がやるべき実務対応を、保存版として徹底解説します。
電子帳簿保存法とは(基本のキ)
電子帳簿保存法(略称: 電帳法)は、税法上の帳簿・書類について、紙ではなく電子データで保存することを認める法律です。平成10年(1998年)の制定(同年7月1日施行)から数次の改正を経て、令和3年度税制改正(2021年)・令和5年度税制改正(2023年)で大きく見直され、令和6年(2024年)1月から電子取引データ保存が原則義務化される形で、現代の中小企業の業務に大きく影響する形になりました。
- 法的根拠: 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
- 所管: 国税庁
- 対象: 法人税法・所得税法・消費税法上の帳簿・書類
電帳法の3つの区分
電帳法は、対象書類の種類に応じて3つの区分があります。それぞれ要件が異なります。
- ①電子帳簿等保存(任意): 自社で電子的に作成した帳簿・書類を電子データのまま保存する区分
- ②スキャナ保存(任意): 紙で受領した書類をスキャナで電子化して保存する区分
- ③電子取引データ保存(義務): メール・EDI・ECサイトなど電子的にやり取りした取引情報を電子データで保存する区分
令和6年改正の重要ポイント(中小企業に最も影響)
令和6年(2024年)1月から完全施行された改正内容のうち、中小企業に最も影響するのは「③電子取引データ保存の義務化」です。
- 電子取引データ(メール添付PDF・ECサイト・クラウド領収書等)は、紙保存ではダメ
- 電子データで「タイムスタンプ・検索要件・改ざん防止」の要件を満たして保存する必要がある
- 違反した場合、税務調査で否認される(=経費として認められない)リスクがある
- 中小企業の「相当の理由」による猶予措置はあるが、原則としては令和6年1月から義務
電子取引データ保存の3要件
電子取引データを電帳法の要件で保存するには、以下の3つを満たす必要があります。
- ①真実性の確保(タイムスタンプ付与・改ざん防止)
- ②検索性の確保(取引日・取引金額・取引先で検索可能)
- ③可視性の確保(端末・プリンタで速やかに出力可能)
中小企業の実務対応 5ステップ
電帳法対応のために、中小企業がやるべき実務をステップ化します。
ステップ1: 自社の電子取引を洗い出す
まず、自社で発生する電子取引を全て洗い出します。代表的な電子取引は以下の通り。
- メール添付PDF(請求書・領収書・契約書など)
- ECサイト(Amazon Business・楽天市場など)からの請求書
- クラウド領収書(交通系IC・カード明細・サブスクリプション)
- EDI取引(BtoBプラットフォーム経由の発注・受注)
- クラウド請求書サービス(マネーフォワード請求書・freeeで送られた請求書)
ステップ2: 電帳法対応のクラウドツールを導入
電帳法の3要件を全て満たすには、対応クラウドツールの導入が事実上必須です。私の支援先で多いのは以下のツール構成です。
- 会計: freee会計 or マネーフォワードクラウド会計(電帳法対応標準)
- 電子契約: クラウドサイン(契約書の電帳法対応保管)
- 経費精算: freee経理 or マネーフォワードクラウド経費(レシートOCR+電帳法対応)
- ファイル保管: ストレージ系(Box・Dropbox Business)+電帳法対応プラグイン
ステップ3: 社内ルールの整備と運用フロー化
ツール導入だけでは不十分。社内で「電子取引データの取り扱いルール」を文書化し、全社員に周知する必要があります。
ステップ4: 経過措置と「相当の理由」の活用
令和6年1月以降、原則として電子取引データの紙保存は不可ですが、令和5年度税制改正で「相当の理由」がある場合の猶予措置(=期限の定めなし、税務署長判断)が新設されています。私の支援先でも、システム導入が間に合わない事業者については、この猶予措置で当面対応している企業が複数あります。ただし、これは「いつまでも紙でよい」ではなく「電帳法対応への移行期間」と理解してください。
ステップ5: 税務調査への備え
電帳法対応を怠ると、保存要件違反として税務調査で指摘されるリスクがあります。重大な違反の場合は、青色申告承認の取消や推計課税の対象となる可能性も否定できません。私の支援先でも、過去に税務調査で電子取引データの保存方法について指摘を受けた事例があります。
よくある質問
Q1. 紙の領収書は今後どうなる?
紙で受領した領収書は、紙のまま保存してOK(またはスキャナ保存の選択肢あり)。義務化されているのは「電子取引データの電子保存」のみで、紙取引は紙保存で問題ありません。
Q2. タイムスタンプの取得方法は?
電帳法対応のクラウド会計・電子契約サービスを使えば、タイムスタンプは自動で付与されます。自社で個別にタイムスタンプサービスを契約する必要はありません。
Q3. 違反した場合の罰則は?
直接的な罰則(罰金等)はありませんが、保存要件違反として、青色申告承認の取消や推計課税の対象となる可能性があります。これは経営に与える影響が大きいため、軽視すべきではありません。私の支援先でも、対応が不十分だった企業が税務調査で指摘を受けた事例があります。
Q4. 中小企業向けの猶予措置は本当にある?
あります。「相当の理由」(=やむを得ない事情)が認められれば、令和5年度税制改正で「相当の理由」がある場合の猶予措置(期限の定めなし)が新設されているので、システム導入が間に合わない場合は税務署長判断で猶予される可能性があります。ただし、これは「対応しなくて良い」ではなく「対応への移行期間がある」という解釈です。
まとめ
電子帳簿保存法は、中小企業の経理運用に大きな影響を与える法律です。特に令和6年(2024年)1月の改正で「電子取引データ保存の義務化」が完全施行され、対応は事実上の義務となりました。私(ゆかりん)が300社以上の支援経験から言えるのは、「電帳法対応は、クラウド会計ソフトと電子契約サービスを正しく導入すれば、それほど難しくない」ということ。逆に、対応を後回しにしてエクセル管理・紙保存を続けると、税務調査で経費否認のリスクが高まります。法令遵守は中小企業にとって攻めではなく守りですが、しっかり守ることで安心して事業に集中できる。「リスクと対策はセットで」というのが私の口ぐせですが、電帳法対応こそ、まさに今すぐ手をつけるべき領域です。
最終更新日: 2026年5月


